e-sports業界
クロストーク
プロとアマチュアを分けるのは
「職業としての覚悟」
ふたりの活躍はよく耳にするけど、この業界を目指したきっかけは何かな?
今でこそ、e-sports大会の舞台でゲームの実況やMCを担当していますが、もともとは声優を目指していました。
私がe-sportsと出会ったのは、2年生の時に参加した合同企業説明会です。
e-sports系の企業の方と知り合うことができて、一気にe-sports業界への道が開けましたね。
声優からキャスターへの進路変更に不安はありましたが、1年次に産学連携プロジェクトで『Call of Duty』シリーズの実況を担当していたので、その経験を必死にアピールしました。
当時を振り返ってみても、合同企業説明会に参加したこと、声優からキャスターに進路変更したこと、1年次に産学連携プロジェクトに参加したこと、どれか一つでも欠けていれば、今の職業に就いていなかったかもしれません。
その頃は日本のe-sportsの出発点とも言える時期で、タイミングも良かったよね。
そうですね。
その後も、在学中にe-sports選手権『FIFA』シリーズの実況を担当することができました。
就職先が決まっていない状況でしたが、在学中からお金をいただいて仕事をするという経験を積んだことで、e-sportsキャスターとしてやっていく自信がつきました。
これまでにプレイヤーとして数々のイベントに参加し、たくさんのキャスターの方を見てきましたが、岡崎さんのように複数のゲームタイトルを実況できるキャスターは多くないですよね。
確かに、ゲームタイトルによって実況の盛り上げ方も違うし、キャスターはプレイヤーと同様にゲームのルールを知っていなければならない。
複数のタイトルを実況できるキャスターは20名もいないかもしれないね。
岩崎さんがe-sportsプレイヤーを目指したきっかけは?
もともと小さい頃からゲームは好きでしたが、高校生の頃に目指していたのは、e-sportsとは全く違う動物系や保育系分野の進路。
高校3年生の時に『レインボーシックス シージ』をプレイし始めたのがきっかけで、e-sportsの世界にハマりました。
友達のチームに誘われて大会に出場したところ、順当に勝ち進み決勝戦に進出しました。
結果は惜しくも準優勝でしたが、e-sportsプレイヤーとしてやっていける確実な手応えを感じることができました。
ただ、当時はe-sportsがメディアに取り上げられる機会も少なく、プロゲーマーとしての道のりが今より厳しいものでした。
でも、大変な道のりだからこそ、先駆者としてその道を切り開いていきたい。ゲームを「娯楽」から「競技」に変えていきたいという思いが強くなっていったのです。
プロのe-sportsプレイヤーになることに不安はなかったのかな?
プレイヤーとしてやっていく決意が本格的に芽生えたのは、出場した大会で優勝した時です。
ファンの方からサインや握手を求められて、大きなやりがいを感じましたね。
東京アニメへの進学を考えたのも、ちょうどその頃。
はじめは進路に反対していた親も納得してくれたようでした。
入学当時から岩崎さんのことを知っていますが、e-sportsプレイヤーとしての職業意識、覚悟はずば抜けていましたね。
「プロとアマチュアの違いは何か」と聞かれることが多いけど、2人の話を聞いていると、プロとアマチュアを分けるのはライセンスや賞金獲得以上に「絶対に職業にする」「これこそが自分の職業だ」という自覚を持てるかどうかだと改めて気づかされるね。
活躍のチャンスが世界にまで
広がるe-sportsのフィールド
岩崎さんは、高校生の頃からプロのe-sportsプレイヤーだったけど、e-sportsを専門学校で学ぶメリットは?
もちろん専門学校に入学しなくてもプロになることは可能です。
ただ、プロゲーマーとして活躍するためには、正直技術を磨くだけでは難しい。
専門学校で学ぶメリットは、ゲームに集中できる環境の中で、技術はもちろん、プロに必要な知識、経験、礼儀まで身につけられるということ。
例えば、東京アニメの「海外研修」では、世界的e-sports企業を訪問し、プロチームと対戦したり、企業ブースを見たりと、世界のレベルを体験することができます。
実際、大会に参加するために海外に行くことも多く、リアルに海外を経験することはとても大事だと思います。
私も海外研修に参加し、本場のエンターテインメントを自分の肌で感じましたが、他では一生得られないような経験をすることができました。
岩崎さんが言うように、e-sports業界に進むと海外に行くことが多いため、海外研修で見たもの、聞いたことはダイレクトに役に立つと思います。
日本と比べて海外のe-sportsの盛り上がりはどうだった?
海外では高額賞金をかけて競う大会も複数開催されており、他のプロスポーツ大会にも引けをとりません。
海外では「プレイヤー=アスリート」として捉えられ、プレイヤーに対するスタッフの対応もVIP待遇。
日本と比べるとこんなに違いがあるんだ、と驚きました。
日本のe-sportsは「海外より10年遅れている」と言われることもあるけど、まだまだ「アスリートファースト」の考え方が根付いていないよね。
「プレイヤー=ゲーマー」として捉えてしまう傾向がある。
ただ、近年日本でもメディアで取り上げられる機会も増え、急速に盛り上がりを見せているよね。
プレイヤーにとっても、キャスターにとっても活躍のチャンスが広がっていると言えるんじゃないかな。
確かに、開催される大会の数も圧倒的に増えて、自分の仕事量も大きく変わりました。
岩崎さんがプレイしている『レインボーシックス シージ』も、以前から世界大会が開催されていましたが、どちらかというと知る人ぞ知るという感じで…。
今は多くの方が熱狂するe-sportsの代表的な競技の一つになりましたね。
海外でも活躍するふたりに聞きたいんだけど、これからe-sportsを専門学校で学ぶ学生には、何を身に付けてほしいかな?
英語ですね。海外のプロチームと意見交換したり、一緒に作戦を組み立てたりすることも多いのですが、相手の考えていることを理解するには英語が必須です。
英語を身につけておけば、海外のプロチームに入ることも、海外のプロチームのコーチとして活躍することもできると思います。
私自身、長年英会話を学んできましたが、英語を話せることで、日本の企業と海外の企業との間に入って翻訳したりと、活動の場を日本から世界に広げることもできるでしょう。
英語以外で身につけてほしいのはプロ意識。
学生時代は「礼儀」「社会人としてのマナー」を徹底的に指導していただきましたが、業界に出てからすごく助けてもらいました。
最近はプレイヤー、キャスターのほとんどがSNSやYouTubeを使って広報活動を行うため、メディアリテラシーについて学べたことも役に立ちました。
それぞれが見つめる
e-sportsの今と未来。
e-sportsを変えるのは君たち
すでにプロとして活躍しているふたりの今後の目標は何かな?
実は、e-sportsキャスターになった頃から「東京アニメの学生や卒業生と仕事をする」ことを目標にしていましたが、以前に岩崎さんがプレイヤー、私がキャスターとして参加したイベントがあり、念願だった目標を達成しました。
あのイベントでは、岡崎さんに応援してもらって助かりました。岡崎さんの応援の仕方がTwitterでも話題になるほど盛り上がった大会でした(笑)。
他のプロスポーツと比べると、e-sportsはキャスターの質によって会場の盛り上がりが大きく変わる。
ゲームのルールを理解していない人には競技のおもしろさを伝えて、ルールを理解している人にはさらにおもしろく伝えるのがキャスターの役割。
キャスターが発した印象的な言葉が、ネット上に大きな爪痕を残すこともあるだけに、プレイヤーにとってもなくてはならない存在だよね。
私も実況する際には、ゲームの専門用語を使いすぎず、少ない言葉でわかりやすく、おもしろく伝えることを大切にしています。
現在、e-sportsキャスターを志望する学生を指導していますが、学生たちと同じ舞台で共演することがこれからの目標です。
僕の場合は、日本で勝ち続けること、そして世界一の称号を手に入れること。
やはりFPSは反射神経が必要とされるゲームで、選手としての寿命も限られています。
そして、勝ち続けることを通して、ゲームを「娯楽」から「競技」へと導き、e-sportsの業界を盛り上げていきたいと考えています。
これから入学する人には、ぜひ僕を超えるという気持ちを持って入学してほしい。みんなの挑戦を待っています。
滋慶学園グループは2019年からe-sportsの人材育成をさらに全国の8校に拡大します。
これまでゲーム制作に関わる人材を輩出してきましたが、これからはゲームをプレイする人材も育成して、e-sports業界に貢献したいと決意しています。
東京の地元企業と在校生のみなさんが中心となってe-sportsの未来、ゲーム文化を東京から豊かにしてほしい。
そのために、夢をつかみとろうとする意欲あふれる学生に、この学校へ集まってほしいと思います。
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