線画を上達させるには、今までの意識を少し変えることが求められます。
モノや人の見方が変わると、生き生きとした線が描けるようになります。そのためには、絵を描く前の準備や構造の理解など、様々な要素から線画の描き方を知る必要があります。
この記事はきれいな線画を描きたいクリエイターに向けて、線画の上達のコツを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
記事の概要
アニメ業界に興味のある方へ
線画を上手に描くためのコツ9選
線画を上手に描くためには、以下9つのコツが重要です。
- 大まかにラフを描く
- 下絵の下書きのイラストを描く
- 下書きを意識しすぎずに下絵を描く
- 対象の成り立ちを意識する
- 前後関係を意識する
- 線の強弱を意識する
- 線の繋がりを意識する
- 明るさや影を意識する
- 修正を繰り返す
一度にすべてのコツを掴むことは難しいので、一つずつ意識して描いてください。絵を描くたびに上達することを実感できます。
①大まかにラフを描く
大まかにラフを描くことで、頭の中のイメージを落とし込めます。言うなれば、ラフ画は「下書きの下書き」です。
そもそも、誰しも最初から清書のような絵は描けません。大まかなラフ画を描くと、構図やレイアウトなどのバランスが整えられるので、下書きのイラストが描きやすくなります。
②下絵の下書きのイラストを描く
ラフであたりをつけた後は、下絵の下書き用のイラストを描きます。下絵とはペン入れの時に迷わず描くために用意するものです。清書のペン入れを想定して、下絵の下書きを描く必要があります。
下絵を丁寧に描けば、イメージ通りの絵を描きやすくなります。
③下書きを意識しすぎずに下絵を描く
下絵は下書きを描き写す作業ではないので、下書きは参考程度に考えて下絵を描きましょ
う。下書きを見続けるより、頭の中で下書きをイメージできると下絵を描きやすくなります。
反対に、下書きに意識しすぎると線が固くなったり、表情に違和感が出てしまったりと、下絵に魅力がなくなってしまう可能性があります。
④対象の成り立ちを意識する
描く対象をよく観察すると、パーツとパーツの組み合わせであることがわかります。たとえば、人体や服の成り立ちなど、プラモデルのようにパーツを分解して組み立て直すと、構造を意識して絵を描きやすくなるでしょう。
もちろん、描く内容によっては対象をデフォルメ化する場合も多いですが、成り立ちを意識した絵とそうでない絵は差が大きいので、対象の構造理解は重要です。
⑤前後関係を意識する
絵は平面のイラストでも、対象の前後関係によって見え方が異なります。遠近法を意識して描くと、対象物や人物の大きさの関係が把握しやすくなるので、バランスの取れた絵が描きやすいです。
ちなみに、対象物や人物の数が増えると、前後関係がややこしくなりやすいので、描いた後に遠目で確認する必要があります。また、風景も前後関係が大事なので、パースの学習は必須になります。
⑥線の強弱を意識する
線の強弱とは、絵のメリハリです。線の太さを変えると光が当たっている部分や、印影の濃淡を表現できるので、絵を立体的に描くことができます。また、絵に躍動感を与えられるため、生き生きとしたタッチで描けるでしょう。
反対に、線が一定の太さだと、のっぺりとした印象を与えてしまうので注意が必要です。
⑦線の繋がりを意識する
絵は線が繋がって完成するものなので、線と線の繋がりは重要です。線が少しでもはみ出したり、途切れてしまっていたりすると、絵を見ている人に悪い印象を与えてしまいます。
長い線になるほど一筆で描くことは難しくなりますが、全体のバランスから逆算して線を繋げることを意識すると、上手に描けるようになります。
⑧明るさや影を意識する
光が当たっている部分の反対には影ができることが原則です。太陽や照明などの光源の位置を意識して描くと、絵が立体的になります。
陰影を意識するには、顔は球体、腕や脚は円柱、指は円錐など、ざっくりとした形にデフォルメ化しましょう。物質や人物を単純な形にとらえると、陰影を意識しやすくなるので、光と影の関係がわかりやすくなります。
⑨修正を繰り返す
絵は一度描いただけでは、うまくはなりません。何度も繰り返し描くことで、改善点や工夫できるところが把握できるので、絵を描いた後は修正を繰り返しましょう。また、描いた後の絵と、修正した後の絵を比較することも重要です。定期的に絵を見直すと絵の上達を実感できます。
線画の描き方のおさらい3選
この章では線画の描き方を、以下3つに分けておさらいします。
基本的に、線は一度に描く必要はありません。修正を繰り返して描くことで、バランスのいい線が描けます。直線と曲線どちらも、微調整を行いながら描くことを意識しましょう。
①直線の書き方
直線は数回に分けて描くことが重要です。描いた線の描き終わりに、次に描く線の描き始めを重ねることで、長い線でもきれいに描けます。
線は長くなるにつれて、きれいに描く難易度が上がるので、最初から線を分けて描くことを意識する必要があります。
直線の上達のコツは、線の描き終わりを細くすることです。そうすると、次の線を描き始める時に重ねやすくなります。線に強弱をつけることは難しいですが、慣れてくると力の入れどころや、力の抜きどころを体が覚えます。
ちなみに、途中ではみ出した場合は、修正の段階で消せばいいので、多少のズレが出た場合でも線は調整できます。
②曲線の描き方
曲線も直線と同様に、数回に分けて描くときれいに描けます。たとえば、円を描く際は、4つ・8つに分割して辺を描くとラクに描けるでしょう。
曲線を上手に描くポイントは、あらかじめ曲がり始める部分を意識することです。徐々に曲がり始める部分を細くして、次の線を重ねて描きます。
ちなみに、曲線を描く際は、手首を柔らかくする必要があります。直線は手首を固定する方が良いですが、曲線はペン先を柔らかくして描くことが大切です。
線画の練習を繰り返すと、力を入れずに柔らかい手首の動きで円を描く感覚を覚えられて、どんな状況にも対応できる曲線の描き方を身に付きます。
なにより、実際に絵を描く際は、直線より曲線を描くことの方が多いです。曲線の描き方を覚えると、ほとんどの絵に応用ができるので、繰り返し練習することをおすすめします。
③立体感を与える加筆
線に強弱をつける加筆を行うことで、線に立体感が生まれます。つまり、影のつき方を線の太さで表現が可能なのです。特に、髪の毛や服のシワなど、光が当たる部分によって線の強弱が生まれるので、加筆によって立体感を与える必要があります。
他には、線と物が重なる部分や凹んでいる部分など、影ができそうな部分は加筆を行うことで、より陰影を意識した線の描けます。また、複数の人物や物質を配置した際に、前後感が出ることで、見せたい部分とその他の部分の強弱を表現できます。
アニメ業界に興味のある方へ
線画が汚くなる原因3つ
線画が汚くなる原因は、以下の3つです。
順番に解説していきます。
①線の太さと黒さ
線が太すぎるとメリハリがつけられないため、のっぺりとした線になってしまいます。太い線で描くと大ざっぱな絵になってしまうので、細かい表現ができません。
もちろん、細すぎる線でもいけませんが、描く対象には適切な太さや細さがあるので、複数の線を描いて比較することが重要です。
他には、力の加減によって線の太さが変わり、バランスが崩れてしまうことがあります。人によっては使っているペンとの相性が悪いことも考えられるので、使っている道具やパソコンの設定などの見直しも必要です。
②手ブレしている
ペンタブレットで絵を描いていると、表面が滑りやすいことで手ブレを起こす可能性があります。紙に描く方法に慣れている人は、ペンとデジタルペンの差に違和感を覚えるはずです。なぜなら、ペンタブレットは紙よりも振動が伝わりやすいので、ペン先がぶれやすくなるからです。
手ブレが気になる場合は、作成ツールの手ブレ補正機能を使うと、描きたい線を描きやすくなります。手ブレ補正は強さを調整できるので、描きたい線によって強弱を変えると、シーンやキャラクターで線を使い分けられるでしょう。
ただし、補正機能を強くしすぎるとイメージ通りの線は描けません。補正の機能を強めに設定する際は、髪の毛など細い線に適しています。反対に、補正機能を弱く設定した線は、ざっくりとしたラフ画などに向いています。
③画面の拡大縮小
パソコンの画面は、ドット(小さな四角形の集まり)で画面が表示されているので、サイズが小さいと線が荒く写ります。なるべく大きい画像サイズで線を描くと、きれいな線で表示されるので、画面は適切なサイズで表示する方がよいです。
そのため、細い線を描く場合は画像サイズの調整が必要です。画像サイズは長辺が4,000px以上の大きさがあれば十分です。
ちなみに、細いペン先で滑らかな線を引きたい時は、最低でも3px~5pxに設定して描きましょう。
線画をきれいに描きやすいソフト3選
線画をきれいに描きやすいソフトは以下の3つです。
パソコンで線を描くと、画面を拡大縮小した時や、ペンタブレットの描きづらさから、線そのものが荒れやすいです。そのため「ベクター形式の機能」が備わっていて、「手ブレ補正の機能」がついているソフトを選ぶことが重要です。上記3つのソフトはどちらの機能を搭載しているので、線画をきれいに描けます。
順番に解説していきます。
①CLIP STUDIO PAINT PRO(クリップスタジオプロ)
クリップスタジオプロは、マンガ・イラスト用のソフトとして多くの方に利用されています。初心者からプロまで幅広い層に対応しており、お絵描きソフトのシェアNo.1を獲得しているほどです。
さらに、マンガやアニメ向きの機能が豊富のCLIP STUDIO PAINT EX(クリップスタジオプロ EX)は、プロの漫画家も多く利用しているので、マンガを描きたい人におすすめのソフトです。
ソフト | 価格 |
---|---|
CLIP STUDIO PAINT PRO | 5,000円(税込)~ |
CLIP STUDIO PAINT EX | 23,000円(税込)~ |
②SAI(サイ)
引用元:SAI
SAIは描き心地を追求したイラスト作成のソフトです。機能はとてもシンプルなので、イラスト制作に集中したい人が利用しています。手描きからデジタル作画に移行したい場合は、SAIを使ってペンタブレットの使い心地に慣れるといいでしょう。
ソフト | 価格 |
---|---|
SAI | 5,500円(税込) |
③Illustrator CC(イラストレーター)
引用元:Illustrator
Illustrator CCはadobe社が提供するソフトです。ベクター形式でイラストを描くことに特化しているので、デザイナーがロゴやアイコンを制作する際に利用しています。ただし、絵やマンガを描くことには不向きなので、 Illustrator CCは主にデザインを目的に使うといいでしょう。
ソフト | 価格 |
---|---|
Illustrator CC | 月額2,728円(税込) |
線画の初心者と描き慣れた人の違い
線画の初心者と描き慣れた人の大きな違いは、頭の中に完成している絵が想像できているかどうかです。絵は描き慣れると、手を動かす前に頭で描けます。絵は訓練次第で上達するので、描いた量で差がつきます。
線画の初心者
線画の初心者は線に迷いが多く、絵に描いたり消したりの跡が残りやすいです。また、絵の全体のバランスが取れていないので、パーツをくっつけただけのような印象になります。他には、下書きを正確に描こうとしすぎて、違和感の残る線を描きがちです。
線画を描き慣れた人
線画を描き慣れた人は、無駄な線がありません。描くイメージが明確なので、迷いなく線を描けます。また、線の太さのコントロールができており、メリハリのある絵を描けます。さらに、下書きは最小限にとどめられるため、描くスピードも早いです。
線画が上達する人としない人の違い
線画が上達する人は全体像を捉えてから線を描きますが、上達しない人は線を描いて全体を作ろうとします。
そして線ばかりにとらわれると、色や影を観察せずに頭の中から排除してしまうので、立体感のある絵を描けなくなってしまうのです。
絵を描くには、まずは対象を観察しなければなりません。対象の輪郭線のみを探してしまうと、なかなか線画は上達しづらいです。
逆に上達する人は、物体や人物の観方を変えられる人です。できれば、絵のプロからフィードバックをもらうことで上達しやすくなります。
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